限界を超える体験!成長の鍵はストレッチゾーンにあり

こんにちは。アレックスです。

 

今日は、仕事を通じて自身の成長を強烈に実感できた24時間の体験について書いてみます。

 

正確には覚えていませんが、おそらく10数年くらい前の出来事です。

 

外資系企業の多くは、年度当初にキックオフイベントを集合形式で実施します。世界のどこかの地域で世界中から営業関係者を一堂に集めてやる場合もありますし、アジア・欧州など地域ごとにやるケースもあります。

 

その年は、アジア地域でのキックオフということで、2,000名位程度の営業関係者がアジア各国からシンガポールに集まるイベントでした。

 

会場は、シンガポールで船型の巨大プールがビルを繋いで空中に浮いているように見えることで有名なマリーナ・ベイサンズでした。

マリーナベイ・サンズ ® - Visit Singapore 公式サイト

 

当時のスウェーデン人の上司から直前に電話があり、他のメンバーよりも少し早くシンガポールに来て欲しいと言われました。

 

言われるがままに、前日の夕方ではなく午前中にシンガポール入りし、何か特別な会議でもあるのかと思いシンガポールのオフィスに向かいました。そこで上司と落ちあうと、イベント会場があるマリーナ・ベイサンズに行こうと言われ、イベント会場のステージなどを設営中のホールに連れて行かれました。

 

そこで上司から、設営中のステージを指差しながら、明日のイベントで製品Aに関する模範営業トーク(セールスピッチ)をあそこで披露して欲しいと言われました。

 

通常、このようなイベントで話すのは、英語がネイティブなアメリカ人やオーストラリア人(たまに標準語が英語のインド人やシンガポール人など)が多く、日本・韓国・中国など英語が苦手とされる国のメンバーがステージに上がって英語でプレゼンすることは稀でした。まして、資料を使ったプレゼンではなく、模範営業トークを英語でするなんて、1度も見たことがなかったです。

 

当時私が所属していた会社は、営業力が凄まじいことで業界で有名な会社でした。1億円を超える年収を稼ぎだす(自分よりも何倍も営業スキルの高い)辣腕営業マンが多数いたのです。アメリカ人のある同僚は、ニューヨーク近郊にある彼の自宅は大豪邸で、裏庭のプールに40人は余裕で入れると言ってました笑

 

それなのに、営業の模範トークを英語ネイティブの辣腕営業マンが多数いる中で、英語で披露するという無茶振りに等しい難題を、よりによって前日に言い渡されてしまいました。

 

最初は、無理だと言って断りましたが、上司は、このようなイベントで普段目立たない日本人の中にもすごい奴がいるんだということを(いつも大口を叩いている白人の営業連中に?)見せつけるチャンスなのだから、日本チームを代表する意気込みで頑張ってやれの一点張りで、引き受けざるを得ない状況に追い込まれました。

 

すでに時間はイベント当日の前日の午後となっていたので、残された時間は夕方と夜のみです。いつもの通り、イベントにただ参加する観客の1人の心づもりで来たはずだったのに、本当に参った、というのがその当時の心境でした。

 

 

これ以上上司と掛け合っても埒が開かないことは明らかだったので、この難題をなんとかしようと腹を括りました。

 

その後、大急ぎでホテルに戻って、まずは模範トークの元ネタを何度も何度も書き直し、しっくりこない部分は多くあったものの、すごく甘い判定で「ギリギリ及第点」というレベルのものを作り、他のメンバーの到着を待ちました。

 

イベント前日の夜は、皆ディナーに出かけるので、シンガポールの繁華街では本社のエグゼキュティブやアジア各国の同僚と出くわしました。簡単な挨拶を済ませると、知人の中で優秀な営業マンと思えた人物に、事情を説明し自分のセールスピッチを見てどう思うか、コメントを求めました。

 

お酒も入っている状況なので、ほとんどのメンバーは、問題ないんじゃない?程度の能天気なコメントで、焦りがどんどん増していき、ジメジメしたシンガポールの気候もあって、嫌な汗が流れ始めました。

 

本当に追い詰められると、不思議と必ずエンジェル的な人が現れるんですよね。

 

これって、人生の不思議なことの一つだと思ってて、神様が本当にいるんじゃないかと思わせてくれる瞬間だったります。すみません、横道に外れたので本題に戻ります。

 

他の同僚と明日の難題について話したところ、本社の製品A担当役員がシンガポールに来ていると教えてくれました。教えを乞う上で、願ってもない最上級の適任者です! 

 

と言うことで、その人がディナーしている場所をなんとか突き止め、そのレストランのバーエリアで彼が話せそうなタイミングを待つために、待機することにしました。

 

もちろん、その役員さんが他のエグエキィティブと楽しんでいる豪華なディナー中に邪魔するようなことはしません。一応自分も大人ですし、彼の気分を害してしまったら元も子もないわけで。

 

彼らの食事が終わり、皆がバーカウンターを通って出口に出るところで彼に突撃です。

 

事情を手短に説明し、5分で良いからアドバイスを欲しいとお願いすると、なんと、次のバーに飲みに行くから一緒に行こうと言われ、他のエグゼキュティブに混ざって、自分も次のバーに一緒に行くことに。そこでは、お酒のせいもあり超フレンドリーな他の役員たちからもいくつかアドバイスをもらえ、それらを必死にメモしながら、何度も何度もお礼を言って、ホテルの部屋に直帰しました。

 

そこからオリジナルのセールスピッチを大幅に書き換える作業です。

 

以前のものよりはだいぶ良くなってましたが、なんとなく腑に落ちない部分もあったのか、ホテルのロビーに降りて、アドバイスをくれそうな人がいないか探していると、ディナーやお酒を楽しんだ後にホテルに帰還してくる人たちの中に、オーストラリアの優秀な営業マネージャーの知人を見つけました。

 

彼に事情を話して、自分のピッチを見てもらったところ、いくつかアドバイスをもらえ、その上、明日の早朝に朝食を食べながらリハーサルをしようと言ってくれました。

 

オーストラリア人って、超ナイスガイが多いんです!

 

そこから、練習です。内容を暗記するのはもちろんのこと、抑揚を大袈裟につけたり身振り手振りを入れたりしながら、ホテルの鏡の前で徹夜で練習し、当日の朝を迎えました。

 

その後、例のオーストラリア人と朝食を食べながら営業ピッチを披露したところ、彼は「すごく良くできている」と褒めてくれた上で、一つだけアドバイスをくれました。それは、

 

日本人のお前が英語での模範ピッチを上から目線でやると反感を覚えるやつも出るかもしれないから、まず最初に、

「自分はネイティブの英語スピーカーではないけど、少しの時間だけ自分の話に耳を傾けてほしい」

と言ってから営業ピッチを披露すればハードルを下げられるし、聴衆の好感を得られやすいと言うものでした。

 

ほんと、いま振り返っても、サイコーのアドバイスです。もちろん、その一文をピッチに付け加えて、いよいよ会場で自分の番が回ってくるのを待っていました。

 

自分の番の30分くらい前になると、イベント運営の会社の人にバックステージに誘導してもらい、そこで待機です。

 

バックステージで緊張のあまりウロウロしていると、もう1人待機していた大柄の5歳くらい年上の白人の人に、「緊張しているのか?」と声をかけられました。

 

正直に「無茶苦茶、緊張している」と伝えると、「心臓に手を当ててみて、心拍数が高まっているのを感じてみて」と言われました。

 

言われたようにすると、「この鼓動の高まりの瞬間にみんな成長している。つまり、いまのように激しく鼓動が高まる瞬間をどれだけ経験できるかで、君のキャリアの成功の度合いが決まると思う。グッドラック!」と言って、彼は先にステージに上がって行きました。

 

後でわかったのは、彼は当時シスコシステムズと言うネットワーク機器の世界最大手のアジア地域統括で、のちにドイツのデジタル地図会社のHERE(いまはAudiやBWMなどドイツの自動車連合の傘下)のCEOになった方です。

 

バックステージで、痺れるくらい格好良いことを教えてくれました。

 

その後、自分もステージに上がって(徹夜で練習した)営業トークを披露したわけですが、残念ながら、その時の様子はほとんど覚えてません。

 

すごく強いフラッシュライトを浴びたこと、終わった後に会社の本社役員でありアジア地域統括の人がすごく褒めてくれ、「英語スピーカーが中国語で営業ピッチをしているような高いハードルの課題を、この完成度で披露してくれたことは素晴らしい。みんなも立ち上がって拍手をするように」と言って、全員がスタンディングオベーションをしてくれました。

 

おそらく、事前に私の上司が、少し大袈裟に褒めてくれるよう事前ネゴを入れてくれてたんだとは思いますが・・・

 

自分としては、最初無理だと思えたことをやり切った充実感を味わえたことに加え、確固たる自信みたいなものが自分の中で芽生えたのも覚えています。

 

ここで紹介した体験は、普段慣れ切った心地よいコンフォートゾーンにいる限りは、絶対に味わえない感覚です。

 

バックステージで教えてもらったように、コンフォートゾーンの外から大きくはみ出したストレチゾーンで鼓動が激しく打つ経験というものがどのようなものであるのか、成功者の人たちが、成功するには場数を踏め、と言う理由も少し理解できた体験でした。

 

こんな濃い24時間を毎日繰り返したら、体力のない自分はすぐにゲームオーバーになってしまいますが、時には強烈な体験をすることで、自分の成長速度を爆発的に加速できます。

 

そのために、昨日と同じような今日を過ごすのではなく、ストレッチゾーンに突入しないとやり遂げられないくらいの難題がいつ降ってきても対応できるよう、毎日精進を重ねて行きましょう!

 

では、では〜